糖質制限で老化??ボディメイキングへの影響はどうなの?

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東北大学のプレス発表によると、糖質制限によって老化が進むという実験データが発表されました。

糖質制限ダイエットは老後にしわ寄せも──。ご飯やうどんなどの炭水化物を減らした食事を長期間続けると、高齢になってから老化が早く進み、寿命も短くなるとの研究を東北大学大学院がまとめた。糖質制限は「内臓脂肪を効率的に減らす」と話題になっているが、マウスを使った試験では人間の年齢で60代後半からの老化が顕著だった。研究内容は名古屋市で15日から始まる日本農芸化学会で、17日に発表する。(Livedoorニュース)

参考: 日本農芸化学会 2018年度学会予稿集

 

一方で・・・

同じくマウスを使った研究で、科学誌『Cell Metabolism』(2017/9/5)に掲載された2つの論文においては、「糖質制限をすると記憶力がアップして寿命が延びるかもしれない」とされています。(Livedoorニュース)

参考:『Cell Metabolism』(2017/9/5)
論文1
論文2

こちらの論文では結論の明言を避けていますが、まっこうから対立する結果が示されています。

ネット上でもそれぞれに糖質制限の擁護派と懐疑派との間で熱い議論が交わされています。

 

「糖が老化を促すんじゃないの?」

「糖質は体によくないのでは?」

という声がある一方で、

「制限するのは良くないんだよ」

「ちゃんと糖質もとらないとね」

という声も。

 

これまで、糖質の摂取は老化の要因の1つ、そして、糖質制限はダイエット、生活習慣病の対策として良いといわれてきました。

果たして糖質制限は悪なのか?

 

ボディメイキング/ボディメイクをおこなうあなたがとるべき行動は?
について考えてみました。

ダイエット・筋トレ、生活習慣病に関心のある40代の方に読んでいただきたい内容です。

 

1 そもそも糖質って何?

糖質と糖類、炭水化物の関係を図に示します。

「糖類」とは、ブドウ糖や果糖のように糖分子が1個のもの(単糖類)と砂糖や乳糖、麦芽糖のように糖分子が2個から成るもの(二糖類)を言います。

「糖質」は、糖類に加えて、オリゴ糖やデキストリン、でんぶんなどのような糖分子3個以上から成るもの(多糖類)とキシリトールやエリスリトールなどの糖アルコールを言います。

さらに、

「炭水化物」=「糖質」+「食物繊維」

となります。

 

「糖(ブドウ糖)」自体は、体にとって重要な働きをしています。

臓器の各器官のみならず、細胞のすべてが糖質を分解して作り出したブドウ糖により活動しているからです。

しかし、注意したいのは、「糖が重要であること」と「口から糖質を入れること」は別のことだ、ということです。

つまり、糖質は口から入れなくても体内で作られる、ということです。

この前置きをした上で次に進みたいと思います。

 

2 糖質ってそもそも何が問題なのか

そもそも糖質を摂るとどんな影響があるのか?特に、摂りすぎるとどうなるのか?

一般的によく言われている点を挙げてみました。

 

(1) 肥満

太る基本原理は以下の通りです。

① 糖質を含む食事をすると、消化されてブドウ糖になり、主に腸管から吸収されて血液中に入る

② 血液中のブドウ糖が増え、「血糖値」が上昇

(※血糖値が上がるのは、炭水化物や糖分の多いメニューのほか、糖分の多いビールや日本酒などのアルコール飲料、清涼飲料の摂取後、喫煙後なども)

③ ブドウ糖は、体の各器官、脳や細胞で消費

④ すい臓からインスリンが分泌され、余ったブドウ糖は肝臓や筋肉に「グリコーゲン」として貯蔵。血糖値が低下。

⑤ グリコーゲンの貯蔵量は限られているため、さらに余ったブドウ糖は、脂肪細胞へ中性脂肪として取り込まれ蓄積

よって、必要以上の糖質を摂ることで肥満につながります。

 

(2) 糖尿病の発症

血糖値は、インスリン等のホルモンの働きによって常に一定範囲内に調節されています。

何らかの原因によってこの調節機構の働きが悪くなると、血液中の糖分が異常に増加し、放置していると糖尿病に至る可能性が高くなります。

糖尿病には、以下のように1型糖尿病、2型糖尿病、その他があります。

1型糖尿病では、すい臓のβ細胞が何らかの理由によって破壊されることで、血糖値を調節するホルモンの一つであるインスリンが枯渇してしまい、高血糖、糖尿病へと至る。
一方、2型糖尿病では、肥満などを原因として、すい臓のランゲルハンス島(すい島)にあるβ細胞からのインスリン分泌量が減少し、筋肉、脂肪組織へのグルコースの取り込み能が低下(インスリン抵抗性が増大)し、結果として血中のグルコースが肝臓や脂肪組織でグリコーゲンとして貯蔵されず、血中のグルコースが正常範囲を逸脱して高い血糖値(負荷後2時間値が200mg/dL以上など)となり、糖尿病となる。(出典:Wikipedia)

血糖値が高くなったとき、それを減少させるホルモンはインスリンだけです。

このたった1つの減少調節メカニズムが破綻した場合、糖尿病を発症することになります。

特に、糖質の多い食生活を続けていると肥満につながり、その状態を放置しておくと2型糖尿病に至るおそれがあります。

 

血中のブドウ糖はインスリンによって分解されることで細胞のエネルギーとなりますが、糖尿病になると、インスリンの働きが悪いので、血糖値は高いのに、その糖をエネルギーとして活用することができない、という状態になります。

その結果、エネルギー不足となって疲労、倦怠感を覚えることに。

さらに悪化すると、「糖尿病性網膜症」といった失明リスクのある症状が出ることもあり、病気になる可能性もあります。

 

(3) グルコーススパイク

通常、食事(糖質)を摂ってしばらくすると血糖値が上がりますが、その後、インスリンの働きで減少します。

図のように食事ごとに上昇と下降のサイクルを繰り返します。

健康体であれば、血糖値は140mg/dl以下で、適度な値を保つようにコントロールされています(青い線)。

しかし、インスリン分泌機能の異常がおこると、食後に血糖値が140mg/dl以上に急上昇しその後、急降下するという現象が発生することがあります。

これを「グルコーススパイク」と言います。

この原因としては以下の2つが考えられています。

・インスリン分泌能の低下(糖質摂り過ぎによるすい臓の働き過ぎ・疲労など。)

・インスリン抵抗性(血糖を体内に取り込む能力の低下。運動不足や肥満になることで低下)

 

グルコーススパイクは、血管内皮細胞を傷つけ、血管障害を進展させることがわかっています。

基礎研究において、正常な血糖値のケース、高血糖が持続するケース、正常血糖値と高血糖が交互に発生するケース、という3通りの方法で血管内皮細胞を培養し、死に至った細胞の割合を調べたところ、高血糖が持続した場合よりも、正常血糖値と高血糖を交互に入れ替えたときのほうが高くなることが報告されています。

出典:Risso A,et al: Am J Physiol Endocrinol Metab. 281:E924-E930,2001

 

(4) 動脈硬化、脳・心筋梗塞

余分な糖質を摂り続けていると肥満や糖尿病につながりますが、先ほど記載したとおり、血糖値が高い状態で維持されてしまうおそれがあります。

高血糖状態は血管に刺激を与え、内皮細胞が傷つくことで、血管内にお粥状の塊ができます。これは、動脈硬化につながるおそれがあります。

動脈硬化が進行すると脳梗塞や心筋梗塞に至る可能性があり、注意が必要です。

 

【参考】

「動脈硬化」とは「動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きがわるくなる病変」の総称です。もともと病理学で使う呼び方で、病名ではありません。
“空腹時血糖値と糖負荷2時間血糖値が総死亡率と心筋梗塞などによる死亡率に与える影響をみたものです。数字は正常の血糖値を1とした場合、どれだけリスクが高くなるかを表しています。空腹時血糖値が高くなると、確かにリスクは高くなりますが、むしろ糖負荷後2時間値が高いことが重要で、空腹時血糖値とは関係なく、死亡率が高くなっています。
食後の高血糖が動脈硬化を進めることを示しています。

出典:国立循環器病研究センター 「循環器病情報サービス」

 

(5) ガンのエサになる

実は、健常者でも毎日のようにガンの“種”となる異常な細胞は発生しています。

ときに、ガン化します。

ただ、免疫力によって病気としてのガンに至らないように防御しています。

常に、ガンの“種”はあなたの免疫力低下の隙を狙っているとも言えます。

 

ガン細胞は糖質を栄養として増殖します。

そのため、医師の中には、ガン予防、ガン対処として、糖質制限が有効とする立場の方々がいます。

一方で、糖質制限は、ガンを攻撃してくれる免疫細胞にも悪影響が出るため、好ましくないとの立場の方もいます。

未だに決着はついていません。

 

(6) 糖化

体(細胞)をサビさせる(酸化)として活性酸素の存在は有名ですが、この「酸化」「糖化」は緊密な関係にあります。

 

食事で摂取した糖質は、臓器や筋肉、脳などに送られ消費されますが、余った糖質は脂肪として蓄えられ、あるいは、タンパク質・脂質と合成し、「糖化」がおこります。

糖化によって生成するのが、「終末糖化産物」(AGE)です。

例えば、血管で糖化が起こると血管壁に炎症が発生し、動脈硬化、さらには心筋梗塞につながるおそれがあります。

腎臓においては、ろ過膜が働きを失い、尿中にタンパク質が漏れ出すことも。

 

さらに、体内での代謝に関わる「酵素」はタンパク質なので、糖化するとその働きを失います。

そうなると、代謝が低下します。

特に、活性酸素除去の酵素(抗酸化SOD等)が糖化によって働きを失うと、様々な酸化ストレスに対抗できなくなり、酸化が進行してしまうことに。

逆に、ストレスによって体内で活性酸化が発生すると、脂質の過酸化を促進します。

生じた過酸化物は再びタンパク質の糖化を促進します。

なお、食後1時間あたりで血糖値が一番上がり、AGEが生成されやすいと言われています。

 

(7) 糖質は必須栄養素でない

糖質の影響の話から外れますが、糖質の位置づけについてです。

 

糖質(炭水化物)は、タンパク質、脂質とともに「三大栄養素」ではありますが、「必須栄養素」にはなっていません。

タンパク質と脂質にはそれぞれ、必須アミノ酸、必須脂肪酸という体内で製造できない栄養素があります。

糖質にはそれがありません。

糖質は、生命活動のエネルギー源と言われていますが、ヒトは、食事から摂取する方法の他にも代替手段をもっています。

タンパク質、脂質を使って糖質を生み出せるように、私たちの体は設定されています。(「糖新生」といいます。)

【糖新生メモ】

糖新生により、脳と筋肉のために必要な血中グルコース濃度を維持。
● 運動時の糖新生: 筋肉でつくられた乳酸を用いて肝臓にて生成。 
● 飢餓状態における糖新生: タンパク質の分解によるアミノ酸、脂質の分解によるグリセロールが使用
  糖新生の約90%が肝臓、約10%が腎臓で起こる。絶食が長引いた場合、腎臓での糖新生の比重が40%程度まで増加。

 

また、糖質を制限することで、脂肪を積極的に活用できるようになり、この状態をケトン体質といいます。

 

書籍「ケトン体が人類を救う」(宗田哲夫著)によると

ケトン体とは、アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸という3つの物質の総称で、ブドウ糖がなくなると脂肪を燃焼してエネルギーに換える物質。
人体に必要なエネルギー源には、ブドウ糖とケトン体があります。
糖質の場合、体内に入るとブドウ糖の集合体であるグリコーゲンとして蓄えられますが、グリコーゲンは12時間で枯渇するという特性があるため蓄積量に限界があり、インスリンが作用し、脂肪に変えて体にためおきます。
一方、脂肪酸とアミノ酸の代謝産物であるケトン体は、体内の脂肪が分解されることによって肝臓で作り出され、血液中に放出される物質。
分かりやすく言えば、脂肪酸を燃やして作り出されるエネルギー源がケトン体です。
また、ケトン体は脳の重要な栄養素です。

 

また、元 国立がんセンター研究所 福田一典医師によると

例えば、「脳や神経系は血液中のグルコース(ブドウ糖)しかエネルギー源にできないので、血糖値(血液中のグルコースの量)が一定以上なければ脳の働きは悪くなり、疲れを感じたり、イライラしたり、集中力が低下する」という意見があります。しかし、砂糖や糖質を摂取しなくても脳の働きは低下しません。イライラや集中力が低下するのは砂糖中毒の禁断症状であり、日頃から砂糖を摂取していなければこのような症状は起こりません。

 

3 糖質制限食とは?

これまで記載した糖質の影響を緩和するために、提唱されているのが「糖質制限食」です。

肥満に関係しているホルモン(インスリン)の過度な分泌を抑えることにより、中性脂肪を減少させる効果が期待できます。

また、糖尿病などの生活習慣病の予防としても期待されています。

 

では、どれくらいの糖質を制限するのか?

糖質制限食としての目安について以下のデータがあります。

極度糖質制限  20〜50g/日 又は2000kcal/日の10%以下
高度糖質制限      50〜130g/日 又は総カロリーの10%〜25%
中等度糖質制限 総カロリーの26〜45%
軽度糖質制限  総カロリーの46〜60%

参考:Feinman RD, Pogozelski WK, Astrup A, et al.: Dietary carbohydrate restriction as the first approach in diabetes management: Critical review and evidence base. Nutrition 31: 1-13, 2015.

 

糖質制限の先駆者で権威と言われるリチャード・バーンスタイン博士は、「130g/日以下」の立場をとっています。

また、糖質制限に積極的な意見をもつアトキンス医師は、「最初の2週間 1日20g以下/その後 1日40g」、ウェストマン医師は、中程度の「1日150g以下」を提唱しています。

 

例えば、1日130gの糖質はどの程度の食事になるのか。

3食、炭水化物をとると・・・

(朝) おにぎり(約80g)糖質30g、糖質なしのおかず

(昼) かけうどん(約200g)糖質50g、糖質なしのおかず

(夜) もりそば(約180g)糖質50g、糖質なしのおかず

主食の炭水化物だけで合計130gになります。おかずや間食で糖質は、摂れません。

 

主食以外でも糖質を摂りたいとなると

毎食、お茶碗に半分のご飯(白米:糖質25g程度)に抑えると

25g×3食=75g

となり、残り55gをおかずや間食、飲み物から摂ることができます。

 

なお、注意したいのは、糖質を減らすと摂取カロリーも減少します。

肥満体の人には好都合なのですが、標準体重や痩せ型の人はエネルギー不足になってしまいますので、タンパク質や脂質を摂って補いましょう。

 

4 特殊な食文化を持つ人々

世界には特殊な食文化をもった人々がいます。興味深いので紹介します。

その食事の特殊性と寿命との関係は見られるのでしょうか?

エスキモー(東部:イヌピアト、イヌイット系。 中部以西:ユピク系)

(※現在は「イヌイット」と呼ばれていますが、ここでは、一般的に広まっている「エスキモー」と表記しました。)

ツンドラ地帯やアラスカなどで生活。

アラスカ先住民族の場合、基本は狩猟を中心とし、海ではアザラシ、クジラ、セイウチ、魚を獲り、陸上においては、トナカイ、うさぎ、鳥などを獲って食します。

雪・氷に覆われる土地なので野菜、穀物は、ごくわずかです。

北極圏では太陽光が弱く、彼らは黄色人種(メラニン色素濃い)なので、紫外線だけでビタミンDを十分に体内で作ることができません。

そのため、生肉をそのまま食べることでビタミンDを補います。

他にもミネラル、酵素が十分含まれており、貴重な栄養源となっています。

火を入れると栄養素が失われるので、生で食べています。

一方で、彼らの平均寿命はとても短いものでした。

1960年代ごろは、40歳前後でした。

これは、糖質が制限された食事の影響ではなく、乳幼児死亡率が非常に高いなど他の要因であり、その後は医療の充実により平均寿命は延びていきました。

しかし、1980年代になると本格的に西洋文化が入り、加工品や糖質(炭水化物)などを多く摂取するようになり、食文化も激変しました。

それによって、ガンの発症率が急上昇するなどの健康問題が出てきています。

そのため、彼らの伝統的な食文化(低糖質の生活)と寿命との関係は、結局、分からないままです。

参考:書籍「極限の民族」
   2009年度第22回研究大会講演記録「北アメリカ極北先住民の食文化と社会変化」

 

モンゴル遊牧民

彼らは、基本的に1日2食です。

夏は、乳製品、冬は肉が中心となります。

食事のパターンとして、

・朝食:乳茶、乳製品

・昼間:馬乳酒(飲み物だけ)

・夕食:(夏)麺料理、干し肉少量、(冬)家畜の肉

 

小麦粉は現代になってから流通するようになり、うどんや饅頭にします。野菜はほとんど食べません。

野菜の代わりにビタミン補給や整腸作用になっているのが「馬乳酒」という乳酸菌アルコールです。

また、モンゴル茶や乾燥チーズを摂ることでビタミン、ミネラルを補っています。

彼らは遊牧民であるため、ゲルと呼ばれる移動式住居に住んでいます。延々と広がる大草原を移動して暮らしています。

冬になると氷点下にもなり、半年程度続きます。ゲルの中は暖房によって適温を保っていますが、こうした厳しい自然環境の中での生活です。

 

モンゴル全体での平均寿命は、社会主義体制から民主資本主義体制に移行した1996年で約60歳、2015年で70歳と年々伸びています。
残念ながら、遊牧民のみのデータは不明であり、食生活との関係も明らかではありません。

参考: World Bank Data

 

メキシコ山岳地帯の先住民

メキシコ北部チワワ州山岳地帯の先住民 ララムリ(タラフマラ族)

先住民ララムリと言えば、ウルトラトレイルや山岳100kmマラソンなどで優勝するほどの長距離ランナー民族として有名。

しかも、タイヤのゴムで作ったサンダル(足の裏の感覚を感じられる薄さ)で、男性はぶかぶかの半ズボン、女性は長い丈のスカート、スカーフという普段の生活着で走ります。

彼らは、標高2000m程度の山岳地帯に住み、ヤギ、羊、牛の放牧をしながら生活しています。

家畜は儀式用に年5、6回のみ食すだけで、普段は農耕用として飼っています。

食事は、とうもろこしの粉の薄焼きパン(トルティーヤ)とジャガイモ、タマネギ、ハラペーニョ(激辛)を炒めた物など。

主に、とうもろこし、豆、カボチャ、焼きネズミなどを食します。

朝晩2回、崖のような山道を20kgの水を汲んでは運ぶなど、日常生活がトレーニングのようなもの。

なかには、自宅から70km近い距離を2日間歩いて会場に移動し、100kmマラソンに参加する人も。

入賞した賞金を生活費に充てています。

そんなタフな彼らの疲労回復源は、イスキアテ(チア・フレスカ)と呼ばれるチアシードを原料とした飲み物で、オメガ3脂肪酸やたんぱく質、カルシウムなどの栄養が含まれています。

参考:書籍「BORN TO RUN」(NHK出版)

 

彼らの主食はとうもろこし。

こんなすごい民族が炭水化物を主食にしているではないか!
と思われるかもしれません。

 

ただ、彼らは、20Lの水を担いで山岳地帯を歩くなど毎日ハードワークをこなしています。

隣の近所まで歩くのにも5km。

しかも、年に何度も100kmマラソン等に出場して生活費を稼いでいます。

 

日々、相当なエネルギーを使い続けている。

そんな彼らだからこそ、糖質補給に意味があるのであって、デスクワークが中心の日本人が糖質の摂取だけをマネしても・・・。

糖質をとる際は、適度な運動もおこない、糖質をしっかり消費することが大切と考えます。

 

なお、彼らの平均寿命はどうなのか?

興味のあるところですが、さすがにこうした秘境ですから、乳幼児死亡率や平均寿命など記録はないのでしょう。データを見つけることはできませんでした。

 

5 日本の食文化については?

弥生時代に稲作が伝わるまでは、日本も狩猟を中心とした高タンパク、低糖質の食事であったと考えられています。

 

先述の宗田医師もまた以下のように述べています。

「700万年前に人類が誕生した当時は狩猟・採取が中心の低糖質・高タンパクの食事だったが、1万年前に農耕が始まり穀物(炭水化物)が手に入るようになってからは、糖質をエネルギーの主体として利用するようになった。言い換えれば、人類が誕生してから99.9%の時間は精製した糖をほとんど取らずに生きてきた

 

一方で、日本の歴史の中でも比較的、生活が安定していたと思われる江戸時代。

米などの穀物を主食とし、それに汁物、魚、お漬け物といった食事で、理想的な食事をしていたと考えられています。

一説によると1人あたり1日4合~5合もの米を食べたとされています。
(飢饉もたびたび発生して、ろくに食べられなかった時期もありますが。)

また、江戸時代の人々は、タフで体力があり、健康だった、というイメージがあります。

実際、本州の半分の距離を数日で移動したり、100kg超というような重い荷物を担いで移動したなどなどの逸話が多く残されています。

農民も商人も日の出とともに起き、日没までよく動く。

 

しかしながら、他方では、栄養状態が悪く生活状況も厳しかったとの見方もあります。

国立科学博物館には、東京都内の開発で掘り出された人骨1万人近くが保管されており、そのほとんどが江戸時代のもの。

骨の状態から、栄養状態が悪く、特に鉄分の不足が見られ、伝染病などで容易に亡くなっていたこともうかがわれるとのこと。

 

江戸の人々は、体力があったことや身体能力が高かったことは本当のことなのかもしれませんが、そのことと長生きすることとは別な問題なのかもしれません。

 

江戸時代の平均寿命は30~40歳ともいわれ、その要因として乳幼児の死亡率が高かったことが考えられます。

現代でこそ、当たり前のように無事に出産がおこなわれますが、歴史を振り返ると、出産時・出産後の乳幼児死亡、幼児期の自然環境での事故死が多かったのです。

感染症での死亡もあります。

 

12代将軍 徳川家慶(いえよし)の場合でさえ、男女合わせて27人もの子どもがいましたが、成人まで生き残ったのはただ1人という状況です。

また、成人に多く見られた病気としては、天然痘 麻疹(はしか)インフルエンザ 脚気(かっけ)など。

ただ、中には、葛飾北斎のように90歳近くまで生きる人もいたようです。

一概に皆が短命であったわけではないようです。

このような時代においては、糖質摂取の影響よりも、さらに寿命を縮める要因があるわけですので、糖質の影響を把握することは難しいようです。

 

現代の日本のように医療技術が発達し、衛生状態がよく清潔・快適な環境で長期間過ごした集団・グループが、糖質制限を実践した場合、本当に長い平均寿命(健康寿命)を達成できるかどうか?

これまでの歴史においてはこのような例がなく、実証はこれからといえるでしょう。

 

6 ボディメイキングの観点からの考察

ボディメイキング(ボディメイク)が目指すのは、身心とともに鍛え、健康で活力ある人生を送ることです。

ボディメイキングにおいては、筋トレと食事の組み合わせが中心となります。

基本的な考え方として、

筋トレ前後での糖質を補給し、タンパク質を摂取します。

トレーニング前の糖質補給は、トレーニングに必要なエネルギー源となります。不足すると筋繊維中のタンパク質を分解してエネルギーを供給しようとします。

トレーニング後は、筋肉へのタンパク質の取り込みが糖質をとることで促進されます。

(糖質摂取によって分泌されるインスリンが筋肉中へのタンパク質の取り込みが促進)

しかし、糖質を摂り過ぎると余分なブドウ糖がタンパク質(コラーゲンなど)と結びついて、糖化がおこるため注意が必要です。

 

冒頭の研究発表においては、なぜ「糖質を制限する」ことが老化を招くのかについてメカニズムは不明とされ、どれくらいの制限が悪影響を及ぼすのかについては明らかになっていません。

はたして、ボディメイキングの観点から、糖質はどのくらい摂るか?

 

【自分自身の状態チェック】

まずは、今のあなた自身の状態をチェックしましょう。

 

適正体重を知る

BMI指数は、ボディマス指数と呼ばれ、ヒトの肥満度を表す体格指数です。

以下の計算式から算出します。

BMI=(体重)/(身長x身長)

 

こちらの計算ツールが便利です。

「BMI計算ツール」

 

日本肥満学会による目安

BMI         肥満度判定

18.5未満         低体重(やせ)

18.5~25未満    普通体重

25~30未満       肥満(1度)

30~35未満       肥満(2度)

35~40未満       肥満(3度)

40以上      肥満(4度)

 

メタボチェック

いわゆる「メタボ」とは、「メタボリックシンドローム」の略で、「内臓脂肪症候群」とも呼ばれます。

複数の病気や異常が重なっている状態を表します。

具体的には、腸のまわり、または腹腔内にたまる「内臓脂肪の蓄積」によって、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の重なりが起こっていることを示しています。

日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm女性90cmを超え、高血圧・高血糖・脂質代謝異常の3つのうち2つに当てはまるものとされています。

こちらからチェックしてみましょう。

厚生労働省「メタボリックシンドロームの診断基準」

 

外見からチェック

入浴前など、鏡であなたの体型をチェックしてみましょう。

外見からもおおよその体脂肪率を知ることができます。

 

【カロリー収支のチェック】

ボディメイキングの基本は、「消費カロリー≧摂取カロリー」です。

以下についてチェックしてみましょう。

 消費カロリー: 基礎代謝量+仕事・家事+トレーニング等

 摂取カロリー: 摂取した食べ物、飲み物

 

基礎代謝量を知る

あなたの基礎代謝量について、およその値が以下の計算ツールで知ることができます。

「基礎代謝量の計算ツール」

 

仕事、家事での消費カロリー(目安)を知る

職業によっても1日に消費するカロリーが違ってきます。

あなたは仕事、家事でどの程度のカロリーを消費しているでしょうか。

こちらが参考になります。

出典: Amebaニュース> あなたの仕事で何カロリー消費量してる? 職業別カロリー消費量「1位 林業:1088キロカロリー/時」

 

摂取カロリーを記録する

自分の食べたもの、飲んだものを記録します。

摂取したカロリーと糖質量を計算してみましょう。

3食の食事だけでなく、間食や飲み物も記録しましょう。

意外と飲み物がくせ者です。

炭酸飲料、スポーツドリンクやカフェオレなどの多くは、実質、砂糖水といってよいでしょう。

商品ラベルの成分表示に糖質の含有量が表示されています。確認しましょう。

 

カロリー及び栄養素の便利な計算ツール

「カロリー計算 Slism」

 

以上を踏まえると

ひとつには、肥満傾向であれば、やはり肥満によるリスクを考えると糖質制限は有効と考えます。

標準体重以下であれば、糖質量に神経質になることはないでしょう。

ただし、日本人はインスリン分泌能力が弱く、食事の際にインスリン分泌されるのが遅いのが特徴です。

さらに、40代以降、インスリンを出す力は加齢とともに衰えていきます。

その点を考えると、血糖の急上昇(グルコーススパイク)への対策が大切です。

・食事は20分以上かけてゆっくり食べる。

・口に入れたらよく噛んで、すべて飲み込んだら次を入れる。

・野菜など食物繊維を先に食べる、又は一緒に食べる。

・低GI値(血糖値の上昇速度が比較的ゆるやか)の食品を選ぶ。

 

さて、糖質を制限する際の目安については、すでに紹介したとおりです。

・130g/日以下 (リチャード・バーンスタイン博士)

 

一方で、アメリカ糖尿病学会の報告が参考になります。

アメリカ糖尿病学会(ADA)が2013年10月9日付けで医学誌「Diabetes Care」に掲載した「Nutrition Therapy Recommendations」によると、糖質制限の有効性を認めつつも、個人の好み、文化背景、生活習慣、治療目標など、糖尿病患者の背景はさまざまなので、個々の患者に合わせて食事指導を行うべきとし、すべてにフィットするものはないとしています。

つまり、誰にでも適用できる具体的な数値は示せないということです。

ただ、言えることは、
糖質制限はもともと、病気などで「やせなければならない人」を対象として始まった食事指導であり、「やせたい人」に対しての食事指導とは異なる、ということ。
つまり、「やせたい人」は、糖質を完全に”カット”してしまうのではなく、糖質の量を”コントロール”すること。

そして、糖質制限が体質に合うかどうか?確認しながら実施することが大切ではないかと考えます。

「自分自身に聞く」

現在のあなたの身心の状態について、あるべき理想の状態でないと感じるのであれば、実際に「糖質制限」を体験してみるとよいでしょう。

 

実践してみてどう感じるか?

最初は何も感じないかもしれません。

しかし、継続して自分自身の状態について感じる練習をしていくうちに、なにかしらの変化を感じ取れるようになるでしょう。

糖質制限 朝の習慣
朝食にバターコーヒーはいかがでしょうか?

バターコーヒーというと油っぽくて「太りそう、体に悪そう、カロリーが高そう・・・」と思われるかもしれません。
しかし、『カロリー』だけを見るのではなく、含まれる『栄養』と『質』が大切です。
コーヒーに含まれるカフェインは目覚めを良くし、記憶力を高めます。 また、ポリフェノールは腸内のやせ型細菌を増やす働きがあると言われています。
バターやMCTオイルには満腹感を持続させる効果があり、MCTオイルにはケトン体を早く生成することを促す効果もあるのでエネルギー効率が良くなり、脂肪燃焼促進や疲れにくくなるという効果をもたらします。
また、バターには「糖質」はほとんど入っていないので(およそ0.02g/1杯)、急激な血糖値の上昇も避けることができます。 
ただし、バター、オイルは良質なものを選ぶようにしましょう。
こちらの店舗では、こだわりの良質なバターコーヒーを提供しています。
また、通販での販売もあるようです。
『最強のバターコーヒー』

 

7 まとめ

以上、糖質の影響と糖質制限について整理しましたが、結局はあなた自身で実際に試してみるしかないと思います。

食事法の影響や効果は、個人差が大きく結果が違ってきます。

自分の体の状態を気にかけ、食事法を変えることでどう感じるか、どのような変化に気づくかに意識していくことが大切と考えます。

最初は気づかないかもしれませんが、継続して意識していくことで、「身体の声」、「身体からのシグナル」を感じるようになるでしょう。

なんか腸の調子がいい感じ。肌つやがいい。など。

そして、3ヶ月~半年くらいは続けてみましょう。

 

自分で体験してみる。実践してみる。

このことは、食事法に限らず、あらゆる場面であてはまると考えています。

 

世の中、情報にあふれかえっており、何を信じて良いのか・・・混乱してしまいますが、そういう時代だからこそ、自分自身でこれは!と思うことを実際にやってみることが大切だと思います。

 

あとがき

個人的には、糖質の摂取はメリットよりもデメリットの方が多いように感じます。

しかし、一方で米の消費量が減少傾向であることについては、複雑な思いです。

米は日本の神話にも登場するように日本人にとって特別な食材です。

日本の食料自給率(カロリーベース)が40%を下回る中、数少ない自給作物の1つが米です。

このまま消費量が減少していくと米農家もまた減少し、自給率のさらなる低下が心配されます。食のセキュリティが益々危うくなりそうです。

肥満や糖尿病になると糖質を制限せざるを得なくなります。

だからこそ、ボディメイキングによって健康体を手に入れ、米の消費を支えていきたいものです。

日本の稲作を守っていきたいとの思いがあります。

筋トレ時の糖質補給には、ぜひおにぎり(米)を摂りたいものです。

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